「urban Mobility」というコンセプト。
うんちくは色々ありますが、要するに都心で「一台で何でも出来るバイク」です。
元祖は勿論TMAXです。
http://www.yamaha-motor.co.jp/mc/sportsbike/tmax/
「走れるスクーター」というジャンルを作り、その進化系である「urban Mobility」という使い方を定義した偉大なバイクです。
欧州でNo. 1の売り上げを誇り、時代の最先端にいるスクーターです。
そんな快走を続けるTMAX530に待ったをかけるべく参入したBMWが作ったスクーターが最初のバイクです。
■scooter
実は日本と欧米で立ち位置が全く違います。
●日本
日本でスクーターといえば「コスパの良い乗り物」です。
平たく言えば日常の「足」としての認識が強く、TMAXのような趣味性の高いモノとしての認識はほとんどありません。
総販売台数の約60%は50〜125ccスクーターなのが示す通り、利便性の高い安価な乗り物という認識です。
●欧州
対して欧米での「scooter」と言えば、ベスパに代表されるような趣向品です。
詳しくはWiki参照。
この前提があった上での「評価」なのです。
売れるモノが違うからこそ欧州でTMAXが最高評価をもらい、BMWが参入する規模にまで成長しました。
では、日本でのビッグスクーターはどうなのか?というのを、歴史を見ながらご紹介します。
●ビッグスクーターブームの歴史
●黎明期(84〜99年)
ATでポジションも楽、荷物も入る、ツーリングも対応という要望が合わさり、ビッグスクーターが誕生しました。
主なターゲット層は家族持ち、もしくは復帰組です。
イメージとしては、MTバイクを「引退した人が乗る」モノでした。
仕方なく選ぶ乗り物という感じ。
しかしながら、ここで「実用性+快適性」というコンセプトが誕生し、成長していきました。
●流行初期〜全盛期(99〜07年)
2ストの原付、原二が低価格、高性能化から子供達(16〜18歳)のおもちゃとして浸透し、フルカスタム(カズロックが代表的)が出始めたこの頃、イノベーションを起こす車両が出てきます。
ご存知「マジェスティ」です。
それまでのビッグスクーターとは一線を画すシャープな見た目、高いカスタム性から爆発的流行を見せます。
今でこそ基本になった「バーハンドル、ショートスクリーン、カスタムマフラー」の三種はここで誕生し、その後のローダウンからエアロまで、現在ある全てのビッグスクーターカスタムはマジェスティを起点として生まれています。
あらゆる意味で、ビッグスクーターの古典がこのマジェスティです。
そして、爆発的に流行った理由はさらにもう一つあります。
これが当時の流行の真っ只中にいた今の30〜40代前半にしか理解しにくい部分です。
結論から言えば、「1台で何でも出来るから」です。
当時のヒット世代は10代後半〜20代中盤で、お金がない。
ビッグスクーターが1台あれば、長距離も余裕なATとポジションの快適性+積載性があり、彼女と遊ぶ時のタンデムも苦にしない…という利便性が手に入ったのです。
実際、一都三県クラスの都市での利便性と、維持費&ガソリン代をメインとする経済性は「クルマより確実に上」であり、「子供がいない生活であれば」必要充分な自由が手に入りました。
そんな時流を得たビッグスクーターが羽ばたいていったのが、この時期です。
●衰退期〜現在(07〜)
さて、最強に見えたビッグスクーターにも弱点がありました。
端的に言うと「つまらない」。
快適性優先の車体は重く取り回しに劣り、大排気量のATの駆動系からくるアクセルの反応の悪さは爽快感にかけ、コーナーはバンク角は足りず楽しめない。
「バイクを操る楽しさ」という点で、エイプやTW、SRに敵うはずもなく、ネイキッドには比べるべくもない。
さらに「本体価格の高騰化」が追い打ちをかけます。
車両販売価格は、初代マジェスティが48万、二代目が58万、現行が72万です。
初代から二代目までは中古で40万もあれば充分…すなわち、現行のPCXを買う値段にちょっと足せば買えたのです。
クルマの半分の値段で、クルマと同レベルの利便性が手に入った時代から、中古の軽自動車と同レベルの価格にまってしまった。
つまり「面白くない」し「値段が高い」というバイクになってしまったのです。
では、今のユーザーはどこに行ったか?
PCXが売れ、NMAXが注目される125ccスクーターの「新しいトレンド」というのは、こういう理由があったのです。
そして「値段が高い」「つまらない」という烙印を押されてしまったビッグスクーターは何処へ向かったのか?
その答えが、最初にリンクを貼った二台です。
■urban mobility
01年に登場したTMAXのコンセプトは「scooterのR1」。
しかしながら、注目はされたものの全く売れない。
ハッキリ言って「大型カテゴリ」の「スポーツスクーター」というのは、ユーザーにとって意味不明でした。
マジェが40万で買えた時代でのTMAXは、大型で維持費は上がるし、足つきが悪く快適性は損なわれ積載性は減る謎のバイクという認識でした。
…その流れが、2010年辺りに変わります。
250ccの価格上昇とTMAX自体の進化によって、価値観のバランスが逆転したのです。
250ccスクーターの弱点は上でも触れた通り…
1、アクセルの反応の鈍さとバンク角不足によって、乗っていて気持ち良くない。
2、400cc以上のバイクを持つ友人とのツーリングで、ペースを合わせるのが不可能。
であり、あの価格(72万)を払って買う価値はないと判断され、衰退していった訳です。
●進化系ビッグスクーター
折しも、爆音マフラー+オーディオ+ローダウンした走れない「ダルいビッグスクーター」が日本のスタンダードとなり魅力を失った現在、「まともなスクーターが欲しい」という熱が高まっていきました。
そこに合致した「TMAX530」が再び脚光を浴び、走れる「気持ち良いスクーター」という使い方をユーザーが認識した瞬間でした。
今までの快適性を最重視したビッグスクーターの「進化系」こそが、この「TMAX」ならびに「C650sport」なのです。
●課題
究極のマルチロールの唯一の課題は、やはり「価格」です。
最初にリンクを貼った2台は100万を越えており、軽自動車が買えます。
しかしながら、走りの良いTMAXをローダウンしてメリットを失わせるような層との差別化を図るには、この「価格の壁」は有効かもしれません。
基本的に「TMAX530」及び「BMW C650sport」を欲しい人は、「走りの楽しさ」を求める方々だという事は確実です。
■まとめ
urban Mobilityのメリットは大きく、買い物からツーリングまで何でもこなせます。
シートヒーターやグリップヒーターの温暖装備を備えれば冬場も平気ですし、タイヤのグリップ検知機能もあるので、安全性能も上がっています。
「家族でクルマで出かける」という使用頻度次第では、クルマよりも有力な選択肢になります。
要するに「urban Mobility」とは、TMAXの提案した新しい使い方の略称です。
そこに殴り込みをかけてきた「BMW C650sport」。
日本でのイメージを見ると、BMWscooterの方が「大人が楽しむバイク」となりますが、欧州No. 1の実績はTMAXの方が上です。
日本ではおそらく欧州のように爆発的には流行らない(上記の通り、日本でのビッグスクーターは「快適性」と「見た目」を楽しむ文化として定着してしまった)と思いますが、基本的に「人と一緒が嫌い」なバイク乗りにとって、溢れ出る魅力があるTMAX530&C650sportは充分選択肢には入ると思います。
まあとにかくこの二台カッコ良いんですよね〜♪
少々贅沢だが、全てをこなせるバイク。
バイク乗りにとって無視できない魅力がある二台のご紹介でした!